きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

碧色のバカンス17

「やはりあの白骨体はジャン・バロンに間違いないそうだ。あとはアドルフに調べさせている構成鉱物の結果が出たら警察に渡してやればいいだろう。
二つの構成が一致すればプレムス建設が関わっていたという証拠になる。そこから先、ジャンの殺害については警察がどこまで切り込めるか、だがな」

シャルルにしては珍しく、歯切れの悪い言い方だった。

「どういうこと?二つの成分が一致すればプレムス建設を逮捕できるんじゃないの?」

シャルルは右手で顎をつまみ、その右肘を左手で支えるようにして考え深げに宙を見据えた。

「もちろん逮捕はできる。ただし文化財保護法違反でだ。ジャンの殺害についてはどこまで警察の捜査が及ぶか。事故として処理される可能性もある」

なんで?
だってジャンは頭蓋骨が陥没していたから撲殺されたんだろうって言ってたのはシャルルよ。まさか今になって陥没していたかどうか、自信がなくなったとか言い出すんじゃないでしようね?とあたしが言うと、シャルルは眉を寄せ、嫌そうな顔をした。

「ジャンの白骨体の周辺の土、及び壁面は微かだが黒く変色していた。これは頭部からの出血によるものだろう。
しかも天井に達するほどの出血ともなればスコップのような物を額に向けて振り下ろされ、脳動脈にまで達したはずだ。額からは相当量の血が噴き出したに違いない。死因は大血管を損傷したための出血性ショック死だ」

あたしはその様子をリアルに想像してしまい、身ぶるいした。
うぅ……こっちまで頭が痛くなってきた。
そんなあたしを見てシャルルは勝ち誇ったように満足げな顔をした。
もう!
あたしが痛い話が苦手なのを知っててシャルルはわざとジャンが亡くなった時のことを事細かに話したんだ。
でもそこまで詳しく言えるほどシャルルにはジャンが殺された時の様子がわかっているのにどうして事故の可能性もあるなんて言うんだろう。

「とにかく警察には情報も提供したし、遺跡内でのことも説明してやった。あとは警察に任せよう。どちらにしろオレ達はあと二日でパリへ戻るんだ。もうこの件はいいだろう」

そうだ。明後日にはあたし達は帰るんだ。でもこれで終わりでいいの?

その日、あたしは早々にベットに入った。だけど体がベットに吸い込まれそうなほど疲れているのに昼間の興奮からなのかなかなか眠れずにいた。
そしてシャルルにお父さんの再捜索の依頼をして欲しいと言ったマクソンが今どんな気持ちでいるんだろうと考えるうちに疑問が湧いてきた。
だってやっと見つかったんだもの、一つの区切りはついたと思うの。だけどまさか長年携わってきた遺跡内で発見されたなんて
皮肉だわ。それに遺跡内だったら真っ先に調べそうなもんじゃない。
だって仕事場なんだし。
なのに半年前お父さんは誤って海に転落して行方がわからなくなったとマクソンは言っていたけどどうして海だと思われたんだろう?
シャルルに背を向けるようにして何度目かの寝返りを打った時、後ろからシャルルが包み込むようにあたしの体を引き寄せた。

「眠れないのかい?」

あたしは振り返り、あたしの中で湧き上がってきた疑問を口にした。
するとシャルルは青灰色の瞳の奥に鋭い光を宿し、あたしをじっと見つめた。

「オレとベットを共にしながら他の男の話か?」

「な、何言ってるのよ。そういうことじゃ……きゃっ、待って」

「待てない」


つづく