きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

夢から覚めて19


「Je t'aime plus que tout.Tu renvoie pas au Japon.」


シャルルに勉強を教わっていた時に聞いていたフランス語とはどこか違う、とても甘く優しい響きだった。
あたしはその言葉の意味が知りたくてシャルルの胸から顔を上げた。


「ねぇ、今なんて言ったの?」


シャルルはあたしを抱きしめていた手を解くと今度はあたしの腰の後ろで手を組み合わせシャルルの作った輪の中にあたしは囲われる格好になった。


「何だと思う?」


あたしはこれまでに教わった事を思い出しながら一生懸命考えた。だけどあたしの中ではどうも意味がよく分からない事になっていた。

「何よりも愛してる日本には帰らないってこと?」



あたしがそう言うとシャルルはクスッと笑った。


「確かにオレは君が生まれた国も愛しているが…。それぞれの関係がめちゃくちゃじゃないか。また比較の所からやり直しだね。」

「えーー」

母国語じゃない言葉を理解するのって本当に大変だと思った。話すのはもちろん理解するのだってとっても難しい。
それでもシャルルに近付けるような気がしてあたしは勉強するのは楽しかった。

「それとも本当にフランス語は辞める?別に無理はしなくていいんだ。君がどんな言語を操ろうが問題じゃないからね。
それこそイタリア語でもスペイン語でもラテン語だってオレは構わないよ。」

冗談交じりにシャルルは言っているけど青灰色の瞳は真っ直ぐにあたしを見つめていた。辞めるのか?と言っているようだった。

「あんたじゃあるまいし、他の国の言葉なんて無理に決まってるでしょ!
あたしはフランス語だからしたいの。あんたを近くに感じていたい。
シャルルの生まれたこの国の言葉だからやりたいだけだもん。そうじゃなかったら日本語だけで充分でしょ?だけどどれくらい掛かるかは分からないわよ?だからあたしは辞めたりはしな…」

それまであたしの話を黙って聞いていた
シャルルが突然、あたしの腰を強く引き寄せると覆いかぶさるようにして形のいい唇をあたしの唇に重ねてきた。
シャルルは小さく首を振り、強引にあたしの唇を開かせるとさらに深く口づけてきた。
そのあまりに情熱的なキスにあたしは次第に立っていられなくなってきてシャルルの腕をぎゅっと掴んだ。
そっと唇が離れてあたしを見つめる青灰色の瞳が揺れていた。

あたしはシャルルの濡れた唇に目がいっちゃってその艶やかさについつい見惚れてしまった。



「何年掛かろうが一生掛かろうが構わない。君のその気持ちだけで充分だ。
それよりマリナちゃん、そんな目をされてたらオレはこれだけじゃ止められなくなりそうだ。もうすぐ研究員達がここにやって来る時間だが人払いしよう。」


うわっ…それはダメっ!
その人達に変に思われるじゃない。それにあたしは心の準備も出来てないし、ましてここの診察台でなんて…固そう…じゃなくて狭そう…でもなくて全然ロマンチックじゃないわ。


「そ、そんな事しなくていいわよ。」


シャルルはそんなあたしの反応を見て楽しんでいるようにも見えた。


「そうだな。君との初めてはもう少しとっておく事にしよう。」


あたしは何て言ったらいいか分からず恥ずかしさをごまかすように素っ気なく答えた。


「とっておくって何よそれ。」


「それも今夜までだ。」


シャルルはそう呟くと再び唇を重ねた。


つづく

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みなさん、こんばんは!
限定記事の予定でしたがたどり着けませんでしたこの検査室でのやりとりが私の中ではとても楽しくて何と3パターンも書いてました(笑)
その中でこれが一番シャルルが幸せそうだなぁと思って選びました。
次回こそは限定記事になるかと思います\(//∇//)\