あたし、シャルルと…?
まずは落ち着いてよく思い出すのよ。
ワインを飲み終わって、もう一本って言ってシャルルがキッチンに取りに行ってくれて…それでどうしたんだっけ?
全然思い出せないわ。
そしてあたしは倒れこむようにして再びベッドに体を沈めた。シャルルに包み込まれているみたい。
ドキドキ…。
心臓の鼓動が激しくなってきた。
さて、どんな顔でシャルルに会ったらいいんだろうかと悩みつつベッドから這い出して辺りを見渡してみたけどシャルルはもう出掛けたみたいでどの部屋にも居なかった。
寂しいようなホッとしたような複雑な気持ちだった。
しばらくしてメイドさんが着替えと新しい下着を持ってきてくれた。
「マリナ様、こちらに着替えとお下着を置いておきます。では失礼致します。」
お下着って…。
恥ずかしいやら照れるやらであたしは赤くなったり青くなったりしながらメイドさんの持ってきてくれた物に着替えた。
きっとシャルルが用意するように言ってくれてったのね。
「さて、自分の部屋に帰ろうかな。」
と独り言を言いながら立ち上がった時に一つの考えが浮かんできた。
そしてその事を考え始めたらジッとしていられなくってあたしはある場所に向かって駆け出していた。
昨夜あたし…シャルルと本当にそうなったの?大体あたしが寝ちゃっている間にシャルルがそんな事するかしら?
いくらあたしでも何かされたら起きるんじゃないかって思い始めていた。
それにワイン飲んだからっていきなり寝たりするっ?!
両開きの扉を勢いよく開け放つとその場にいたみんなが一斉にあたしを見た。
「マリナ様いかがなさいましたか?
朝食でしたら今、シャルル様のお部屋にお持ちする準備をしていたところでございます。」
コック長は穏やかな表情であたしを宥めるようにそう言った。
だけどあたしは首を振った。
「違うの。
昨日のデザートとおつまみは誰が作ったのか教えてちょうだい。」
コック長が毅然とした態度で答えた。
「私です。シャルル様のご注文でした。
ワインのお供にという事でしたので取り急ぎご用意致しました。何か不手際がございましたか?」
コック長はあたしが一緒にいた事は知らないのかもしれない。
それなら…。
「とっても美味しく頂いたわ。もちろんシャルルの分も全部ね。そしてすぐに寝ちゃったわ。」
わずかにコック長の眉が上がったのをあたしは見逃さなかった。
「あんたシャルルに恨みでもあるのっ?!」
あたしの言葉に周りのコック達もざわつき始めた。前にシャルルが言ってたわ。
シャルルをハメようとした人物を考えていたら百人や二百人じゃ収まらないって。オレは敵が多いんだと…。
その時の言葉をあたしは思い出していた。お屋敷の中にまでそんな人間がいるなんて…。
「あんたまでこんな事したらシャルルは家でも心を休められなくなるじゃない…。」
あたしは怒りと悲しみで震えが止まらなかった。
つづく