きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

la douce pluie 49

バカンスから帰ってきた日から私はシャルルと一緒の部屋を使う事になったの。 と言うか帰った時には私の荷物が全てシャルルの居室に移動していたのよ。 私達がモルディブに行ってる間にセキュリティを強化したとか何とかってシャルルが言っていた。
 「マリナ、こっちにおいで。」
 書斎にいるシャルルに呼ばれて私が行ってみるとシャルルは仕事中みたいだった。私が何だろうと思っているとシャルルは席を立ち、代わりに私に座るように言った。
 「ここに座って。」 
私はシャルルの大きな椅子によじ登るようにしてドッカリと座った。シャルルは私の脇に立ち、頬が触れそうな距離で机の上のパソコンを触り始めた。 サラサラの白金色の髪が私の頬にかかりこんなに近くから見るシャルルの横顔の美しさに思わず見惚れているとシャルルはパソコンの画面に視線を向けたまま言った。
「マリナ、手を出して。」 
私は何か貰えるのかしら?と期待しつつ机の上に右手をパーにして出した。 するとシャルルはタブレットのような機械の上に私の手のひらを乗せて再びパソコンを操作し始めたの。
「何これ?最新型の手相占いとか?」
シャルルは私を一瞥するだけで質問には答えずにパソコンの操作を続けた。 私は仕方なくシャルルの作業が終わるのを待つことにした。
「マリナ動かないでくれ。」
シャルルは時折、私の手の位置を調整しながら再びパソコンを操作し始める。 動くなって言われると意識が右手に集中してしまって余計に指先が動いちゃうのよね。
「マリナ動かすなっ!」
ひぇぇー!こういう時のシャルルは本当に凄い迫力なのよ。
「動くなって言われると緊張しちゃって…。」
と私が言うとシャルルはついに無言で冷凍光線を私に浴びせたのよ。 私は自分が銅像になった気持ちになってじっと目を瞑りひたすらシャルルの作業が終わるのを待った。数分経ってやっとシャルルの呪縛が解かれた。
「よし、手を退かしていいよ。」
私は右手を引っ込めながらシャルルを振り返って聞いた。
「これ、何なの?」
「これは掌形認証だ。手や指の長さや幅、静脈パターンなどを読み取ったんだよ。これらはDNAの配列で決定されないため同じ特徴を持つ人間は存在しない。 これまでの指紋認証と併用させる事によりオレ達以外は一部の人間を除いて完全に入室できない。それから中から開ける際も認証するようにした。」

「えっ?!出る時もするわけ?」

シャルルは冷やかに私を見据えて言った。
「当然。来訪者を無警戒でこの部屋に侵入させた人間がいるからね。」
それって私の事だ。あの時ミシェルに早く開けろって言われて私はまんまとこの部屋にミシェルを入れてしまった。 だけど認証システムを強化しても私が騙されないとは限らないと思うけど。
「君の平常時のデータを入力した。脅迫や極度の緊張状態には血圧や体温変化が見られる。その際は解錠しない仕組みだ。今回のようにミシェルに騙されて解錠する事は二度とない。それからこれを肌身離さず着けていること。」
そう言ってシャルルは私の手を取りシルバーのブレスレットをつけた。
「前のGPS機能に加えて君の状態を常にデータ化しオレのPCで受信できるようにした。君が一人の時に異常事態が発生すればアラームで知らせてくる。君に危害が加わる事態や過呼吸の際も対応できるってわけだ。」
カチッと音を立てて私の手首でブレスレットが妖しくキラリと光った。
「ねぇシャルル、今カチッって音がしたわよ。」

サラサラの髪をかきあげながらシャルルは何て事ないといった風にさらりと言った。
「鍵つきにしたんだ。それはオレにしか外せない。特殊金属で作ったから無理に切る事も不可能なんだ。なんせオレは完璧主義なんでね。」
「そこまでしなくてもいいのに。」
「マリナ、オレがこわい?」
私は俯いて首を振った。 シャルルに心配かけたのは私だもん。仕方がない。これでシャルルが安心出来るなら邪魔になるものでもないし、よく見れば鎖の部分には所々に薔薇があしらわれていてとても素敵だった。
「怖くなんてないわよ。だって私を思ってシャルルが作ってくれたんでしょ? ありがとうシャルル。とても素敵なプレゼントだわ。大事にするね。」
これにはシャルルの愛がたくさん詰まっているんだって思えた。
「ああ。二度とマリナが苦しまなくて済むように…。」

私の手を取ると光るブレスレットにそっとシャルルは形のいい唇を寄せた。




つづく