きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

la douce pluie 48

「マリナ、いいかげん起きてくれ。」

ハッとして目を覚ました私はシャルルの膝枕で寝ていたのよ!ガバッと起き上がって辺りを見渡せば窓の外は見慣れたパリの景色が流れて見えた。
シャルルは新聞に視線を落としたまま真剣な表情で私に言った。


「過睡眠は脳の覚醒維持機能の異常が原因とされている。やはり君を一度解剖してみたい。」

過睡眠って…ただちょっと寝てただけじゃないと冷や汗ものの私をよそにシャルルは至って普通の事のように続けた。

「もしくは著しく夜間の睡眠障害があるかだが…マリナの見解を聞かせてくれないかい?」

そう言って私を覗き込むシャルルの目が妖しく光った。夜間の睡眠障害ってあんたじゃないっ!


「そうよ、あんたがなかなか寝かせてくれないからよ。あれだけ激しく何度…」


私は勢いよくそこまで言ってふと昨夜の事を思い出して恥ずかしくなってしまった。


「何度もなに?」


シャルルは追求の手を緩めることなく私を追い詰めていく。


「嫌だった?」


「そ、そうじゃないけど…」


「けど?」


「って何を言わせるのよっ!もうっ!」


顔を赤くする私を見てシャルルは肩を揺らして笑った。
その屈託のない笑顔につられて私も笑顔になる。こうして私たちを乗せた車がアルディ家の門をくぐり本邸玄関前へと停車した。

シャルルによると私はプライベートジェットがモルディブを立ってすぐに寝てしまったらしく空港に着いても全く起きない私をシャルルが抱えて車に乗せてくれたんだって。



当主であるシャルルの数日ぶりの帰宅とあって玄関前では執事さんを始めとするメイドさん達が出迎えに来ていた。
両側にずらりと並ぶ皆さんの迫力に私は気後れして思わず立ち止まってしまった。まるで花道を歩くようで何だか照れくさい。その中を慣れた様子で颯爽と歩いていくシャルルが眩しかった。いつだって人々の注目を浴び、人々に囲まれて生活してるシャルルにとってこれは日常なのよね。
私はシャルルの後ろ姿を見ながらそんな事を考えていた。シャルルは足を止めて振り返ると大きなスライドでこっちに戻ってきた。

「どうした?」

私は何でもないのと言って首を振った。

「ううん。私はこういうのに慣れてないから圧倒されちゃっただけ。あんたはこれが普通の事なんだものね。」

私がそう言うとシャルルは髪を揺らして少し屈むと私を一気に抱き上げた。

「こんなの慣れなくたっていいさ。
オレと一緒でなければ君を屋敷から出すつもりもないしね。」


私が驚いてシャルルを見上げると逆らう事の出来ない強い意志がそこにはあった。本気とも冗談とも取れる言い方に私は戸惑ってしまった。


あれ日以来シャルルとはミシェルの話はしていなかったし考える事もしなかった。でもやっぱりシャルルは私を自由にさせていた事を後悔しているんだと感じて何も言えなかった。

【そんなにミシェルが気になるか?】

出て行ったミシェルを心配していた私にシャルルが言った言葉だった。二度とあんな思いはさせたくない。
だからミシェルの事はなるべく忘れるようにしていた。孤島は監視員って言う名の使用人がちゃんといて自由に出歩けない以外はここと変わらないってあの時ミシェルが言っていた。
だからきっとミシェルは…私はそう願うばかりだった。








つづく

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みなさん、こんにちは!

あと数話で完結する予定ですが時間がかかってしまったらごめんなさい。