きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛はそこにある…je crois 16

 
「どっちが先にバス使う?」

ジャケットを脱ぐとソファへと投げながら薫はこっちに振り返って聞いてきた。

ど、ど、どっちって…っ!?

カウンターへ向かいもう一度聞いてくる。

「お前さんが先に入るかい?」

ミネラルウォーターをグラスに注いで飲み干すと唇を手の甲で拭う仕草に見惚れてしまう。

「それとも一緒に入ろうか?」

妖しげに笑うと私に向かって近付いてくるもんだから思わず後退りしてしまった。変に色気を出さないでほしい。
あんたのその容姿で迫られたら誰だって戸惑うのよ。

「遠慮しなくてもいいよ。あたしとお前さんの仲だ。洗ってやるよ、隅から隅まで、たっぷりと。」

薫はサッと私の肩に手を回すとバスルームへと誘導していく。

「何考えてるのよ、薫っ!
冗談はやめてちょうだい。」


肩に回っていた薫の手を退けて私は言ったけど薫は笑っている。


「浮気性のマリナちゃん。
目移りばかりしてると旦那に怒られるぜ。あいつ嫉妬深そうだもんな。
ガイともちゃんと距離を置くんだよ。」


そう言ってバスルームへと行ってしまった。私をからかいながらガイとの事を心配していたってわけね。

私はソファに横になって足を投げ出した。時差の関係で夜だけど、全然眠くない。
夜更かしは得意なんだけど明日は朝から病院へ行くから寝ておかないと辛くなりそう、なんて考えていた。

いつの間にかシャルルの事を考えていた。
まだ手術しているのかな?
どれぐらい掛かるんだろう。

難しい手術だとしてもシャルルが執刀するんだから大丈夫よね…。
間違っても失敗なんてしないもの。
だけど出来る事には限りがある事を今の私は知っている。

出来る事、しちゃいけないこと…出来ない事…シャルルを信じて待つしかない。

朝になればパリに帰ってしまうのかな?
それともしばらく様子を見るために日本に残るのかな。
いつ最後の日が来てしまうんだろう。

朝になるまで眠れそうにもないわ。
ちょっと病院に様子を見に行って来ようかな。それにシャルルの近くにいたかった。

机の上のメモに「眠れないから散歩してくるね。」と書いて部屋を出た。


一段と冷え込んできた外気が客の出入りと共にわずかにロビーに入り込んでくる。
私はコートの見頃を合わせ直し、マフラーで鼻まで覆った。
病院のすぐ目の前にあるこのホテルは歩いて10分ほどの距離だった。

入り口の手前で声を掛けられた。

「どこへ行くの?マリナ」

ガイだった。

「あんたこそこんな所で何をしているの?」

「2人がホテルを出るかもしれないって思って待っていたんだ。病院に行くにしても夜だし女の子だけだと危ないから。」

それでいつ来るかも分からない私たちをここで待っていたってわけ?!
病院に行かないで部屋で寝ちゃってたかもしれないじゃない!?

「オレ眠くないし、部屋にいても落ち着かないからちょうどいいんだ。」

そう言って笑うガイの優しさが胸にしみる。私たちが心配なら部屋に訪ねてくる事だって出来たはずなのに、そうはせずにロビーで待っているなんてお人好しもいいところよ。
こんな事ばっかりしていたら疲れちゃうわよ。もっと上手に生きて行かないとダメだわ。


「ガイ、部屋に訪ねてくれれば良かったのよ。病院に行くなら付いて行くって言ってくれれば、こんな所で寒い思いもしなくて済んだのよ。
もっと賢く生きて行かないとあんたが疲れちゃうわよ!
優しさって大切だけど、こんな事をするあんたと一緒にいたら心配かけられないって思ってみんな疲れてしまうわよ。」


ガイはアフリカの自然の中で真っ直ぐに育ってきたせいなのか、純粋すぎる所が昔からあった。
自分は我慢してでも人を大切に思う。
間違ってはいないけど、行き過ぎると重いわ。こっちが心配になるもの。


「マリナだから待ったんだ。
部屋に訪ねていってオレ、普通でいられる自信がなかったんだ。
悲しそうな顔を見たら抱きしめたくなる。だけどそんな事はだめだから。
オレだってみんなに優しいわけじゃないよ。」

悲しげに笑うガイを見ると胸がチクリと痛んだ。懐かしい痛みだった。
私を好きだと言ってくれた時と同じ痛み…こんなに切ない顔をさせてるのは私なの?
人を愛する事の辛さが今の私には痛いほど分かる。
ガイの気持ちに応えてあげられたらどんなにいいだろう。
それってシャルルを忘れるってこと…?



「逢引かい?
あたしの目を盗んで会うなんて、お二人さん本気で浮気モードなのかい?それなら野暮な事は言わんが…

マリナ何かあっただろ?
あたしにも言えない事かい?」


「な、何にもないわよ!
それに浮気だなんて、変なこと言わないでよね。ガイはここで私たちが来たら付いて行こうとしてくれてただけよ。」

薫は私の前に立ち少し屈んで私の顔をじっと見て言った。

「ガイとの事が原因じゃないって言うなら、おまえさんが病院で泣いていたワケを聞かせてもらおうか。」

薫はガイの事で悩んでるって思ってるんだわ。どうしようっ?!違うけど本当の事は話せないし。


「さっきは迷子になりそうだったし、病院って夜は独特の雰囲気があるでしょ。
それで少し怖くなっただけよ。」

そう言って薫をちらっと見たら腕組みをして何やら考えているみたいだった。
この年で迷子って言い訳をするのもどうかと思ったけど他に思い付かないから仕方ない。

「とにかく部屋に戻って話を聞かせてもらうよ。ずっとここにいたら病院からの連絡が入っても分からないからな。
ガイも来いよ。聞きたい事がある。」



つづく

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みなさま、こんばんは!

もうすぐクリスマス🎄ですね!
プレゼント🎁は用意されましたか?
子供たちにとって、とても楽しみなイベントですよね。そして我が子の喜ぶ姿を見れるのは親にとっては何よりのプレゼントですよね😊

次回は手術へ向かうシャルル視点でのお話になります。
医療関係の話に及びますので、ファン限定公開とさせて頂きます。
お気に入り登録の際は一言お知らせくださいませ。

またこの手の話が苦手な方は飛ばして読んで頂いても影響はないと思います。
難しい質問、不満、イライラなど私には責任が負えません。
何があっても平気と言う方はお進み下さい。(何があっても…って重い?)