忘れられないもの30最終話
それからしばらく二人でベットに横になったままいろんな話をして過ごした。
「それであんたは何て言ったの?」
ジルが桜を見たいって言っていたって話をしていた時だった。
「シャルル……?」
ふと見上げると長い睫毛は伏せられていていつの間にかシャルルは眠っていた。
シャルルがこんな風に寝ちゃうなんてきっと滅多にないはずだわ。たぶん日本に来る時間を作るために睡眠時間もろくに取らずに無理をしてきたんじゃないかと思った。それに昨夜もあたしが寝た後もしばらくそばにいてくれたみたいだし。
あたしは起こさないようにそっと横向きになってその寝顔を覗き込んだ。シャルルの寝顔を見るのはこれが初めてじゃない。だけどあたしが見たことがあるのはいつだって怪我を負って痛々しく眠る姿ばかりだった。こんな風に穏やかに眠るシャルルは初めてだった。
透き通るような白い肌に吸い寄せられるようにあたしはシャルルの頬にそっと手をあてた。
「マリナ……?」
青灰色の瞳がそっと開けられ、シャルルは微睡みの中であたしを見つめ返す。
「起こしちゃったわね」
シャルルはあたしの方に横向きになるとあたしを胸の中に囲い込むように抱きしめた。
「いつの間にか寝てしまったんだな。夢を見ていた。夢を見るなんて何年ぶりだろう」
シャルルはあたしの髪をそっと撫でる。
「どんな夢?」
「とてもいい夢だったよ」
シャルルはあたしの額に唇をあてた。
「だからどんな夢?」
「教えない」
「何でよ?教えてくれたっていいじゃない」
あたしがむくれているとシャルルはあたしに覆い被さり妖しげな瞳を煌めかせた。
「いやだね」
「シャルルのケチ」
「ケチで結構だ。だけど……」
シャルルは一旦言葉を切るとあたしの髪を撫でるように指を滑らせる。
「君がイヤって言うほどの贅沢をさせてやる。何もかもオレが手にできるすべてを君にあげるよ」
そう言って唇を重ねた。
次第に熱くなっていくシャルルの体に組み敷かれてあたしはシャルルの甘い誘いに流されそうになりながら必死になった。
「待って、シャルル。あたし……まだ」
まだシャルルと結ばれてからそんなに時間も経ってないのにまたさっきみたいにされたらおかしくなっちゃう。
「オレを拒むことは許さない。もう離さないって言ったろ?」
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そう、君を二度と離したりはしない。
マリナちゃん、いい夢は人に話すと叶わないって昔から言われている。
そんな非科学的なものでさえ君となら叶いそうな気がするんだ。
ー毎年、春には二人で満開の桜を見に日本に行こうー
fin
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みなさん、こんにちは!
最後まで読んで下さってありがとうございました今回の話を書き始めたのは三月、桜の蕾が膨らみ始めた頃でした。五ヶ月が経ち、もう夏真っ盛りですね!
前半のフランス編ではアデリーヌの登場でシャルルの心の奥底にしまい込んでいた「忘れられないもの」を引き出してみました。後半の日本編ではマリナちゃんに「忘れられないもの」をひたすら追いかけてもらいました。
そして最後のシャルルの夢は何だったか分かりましたか?文章力に自信がない私…
ところでyahooアプリが九月で終了するそうですね。どうしよう…私、いつもスマホで書いているので途方に暮れています。続けられるのかしら?スマホで投稿って出来なくなる?!全く状況がわからない。という事でこの九月までに50000hit記念をとりあえず創作したいと思います。その後は続けられるのかちょっと未定です。PCでやるのは時間的に厳しいので何かアドバイスがありましたら教えて下さいm(_ _)m