きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

忘れられないもの14

高瀬さんは手慣れた様子で車を車庫に入れるとシートベルトをガチャッと外しドアを開けた。あたしも慌てて車の外に出た。

「ここの最上階のレストランはたまに利用するんだけど今月の初めにリニューアルしたって聞いたからマリナちゃんとゆっくり話もしたかったし近いうちに来ようと思ってたんだよ」


その言葉を聞いてあたしは胸をホッとなでおろした。あはは……レストランね。
あたしったら一人で何を勘違いしてるんだろう。
あたし達はエレベーターに乗り込み最上階を目指した。ポーンと到着を知らせるチャイムが鳴りゆっくりとドアは開く。あたし達は店内の奥へと案内された。
窓の外には煌めく夜景がいっぱいに広がっていた。
席に着くとさっきとは違う店員さんが現れて高瀬さんに声を掛けた。

「高瀬様、本日はご来店ありがとうございます。私は支配人の戸波と申します。ご予約のプロヴァンスコースをご用意いたします。どうぞごゆっくりお過ごし下さいませ」

高瀬さんはいつの間に予約したのかしら?それにしてもこういうお店って丁寧に支配人が挨拶に来るんだとあたしは感心してしまった。

「マリナちゃん、ごめん。勝手にプロヴァンス料理にしちゃったけど良かったかな?」

プロパン料理ってなんだろう。
あたしがキョトンとしていると高瀬さんは説明してくれた。

「フランスの南部プロヴァンス地方の伝統的な料理でニンニクとオリーブ油、ハーブを使った物だよ。マリナちゃんはラムとか苦手じゃない?」

プロパンじゃなくてフランスにあるプロヴァンスって場所なのね。
フランス料理は何度かパリに行った時にシャルルの家でご馳走になった事があった。フランス人って毎日こんなに豪華な物を食べてて太らないのかしら?って感心したっけ。

「マリナちゃん?」

高瀬さんに呼ばれてハッと我に返った。

「よく分からないけどあたし何でも食べれます」

かつて猫もイヤがったオートミールだって食べようとした事だってあるもの。何だって食べ物なら贅沢は言わないわ。

「それなら良かった。ワインは飲めるかな?」

「もちろん!赤でも白でも何でも出された物は残さずいただきます」

あたしがそう言うと何がおかしかったのか高瀬さんはクスクスっと笑うと店員さんを呼んで長い名前のワインを頼んでくれた。

「マリナちゃんて楽しい子だね。ボクの周りにはなかなか居ないタイプだよ。一緒にいると疲れが飛んでいくようだ」

お絵描き教室での子供達の様子を話したり高瀬さんの学生時代の話を聞いたりしながら、あたし達は次々と運ばれてくる料理を美味しくいただいた。
最後のデザートは艶やかなチョコレートを纏い、星屑のように金粉が散りばめられたトロワショコラだった。思わずため息がもれる。
さっそくフォークを入れると表明のチョコレートがパリっと音を立て、中のチョコムースが姿を現した。
添えられているベリーソースと一緒に口の中へ運ぶとほど良い甘さとベリーの酸味がなんとも言えない。

「とっても美味しいですね!」

とあたしが顔を上げると高瀬さんは柔らかな眼差しでこっちを見つめていた。
そして高瀬さんは何かを吹っ切ったかのように小さく息を吸い込むと手にしていたケーキフォークを静かに置いた。







つづく

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みなさん、こんばんは!
いつもご訪問ありがとうございます
あと少しで50000hitを迎えられそうです。日頃の感謝を込めて何か書こうかと最近、あれこれと考えているんですが…

甘いお話がいいですかね?←さりげなくリサーチ。それともムフフな感じ?(お察し下さいw)嫉妬シャルル?となると少し複雑な感じがいいのかな…どれがいいですかね?(もう完全に聞いてますね)
私はこの最初の段階を楽しむのが好きいろんな道があってどの方向に進んで行こうかワクワクしながら妄想するんです。これを実際に文章にする時は煮詰まったら終わりです(笑)その時は唸ってますけどね