きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛は記憶の中へ 10


美沙を連れてカフェを出たオレは、バガテル庭園を横目に見ながら庭園前にあるバスターミナルへと向かった。
庭園内駐車場もあるがこの時期は年末の駆け込み需要なのか、やたらと混雑している。
フレデリックには駐車場ではなくムーラン道路側にあるバスターミナルへ来るように指示をした。
ブローニュの森の西側は他の観光地へのアクセスには遠回りとなるため、思った通り車はほとんど走っていなかった。

仮にカフェにいたのがマリナだったとして、いくつもの不確かなものが期待となり不安へと姿をかえていく。
マリナ、君はなぜここへ来ていたんだ?
店員の言ってたように本当に一人だったのか?だとしたら和矢はどうしたんだ?
果たしてあいつがマリナを一人で渡仏させたりするだろうか?
しかも何のために?
仕事か?また取材か?
だとしてもオレがもし和矢の立場だったらそんな真似は絶対にさせない。
どんなトラブルに巻き込まれるか、その対処もろくにできそうもないマリナを一人で?
そう考えるうちにマリナが一人で来たとは考えにくいとの答えにやはり行きつく。
たまたまあいつがマリナのそばから離れたタイミングで盗難に遭っただけなんじゃないのかと思い始めてきた。
電話がかかってきたとか、トイレにたったとか、それこそ花を買いに行ったでもいい。
そうでなければマリナがパリへ来ていた理由にオレの思考は囚われてしまうだけだ。
すでにオレの仮説思考の中では盗難に遭った人物がマリナだという前提で分析は進んでいるのだが。
まずは仮説を立証するためにしなければならないことを一つずつ潰していくしかない。

***

「外国人観光客のそういった届け出はいくつもありますが、昨日ですよね?池田という名前はないですね」

制服のボタンがはち切れんばかりの大きな腹をさすりながら警官は言った。
警察に来てないのか?
いや、あと一つ可能性はある。

「なら黒須ではどうだ?!」

あれから数年がたっている。
可能性としてはなくはない。
審判を待つような思いでオレは警官の答えを待った。
すると警官は再びタブレットに視線を落とした。数秒後、警官はお手上げだと言わんばかりに両手の平を上にあげた。

「そっちもないですね」

手がかりは見つからないままだが、ほっとしている自分に気づく。
ブローニュの森から一番近い16区の警察署に来ていないとすると、マリナ、君はどこへ行ってしまったんだ?
それとも、そもそもマリナ、君ではないのか?

 

 

 

つづく